Tidjikja



 ティシットやワラッタと同様、モーリタニアで古くから栄えたサハラを旅するキャラバン隊の街で、タガン地方の中心地。
 
 日本の奈良に匹敵するような、静かなたたずまいの美しい都市で、街の中を走るラシッド乾河を境に北部の高台に旧市街がある。旧市街の家々は18世紀に造られたもので、タガン地方特有の石と粘土を重ねた建物、入り組んだ路地、中庭のある迷路のような屋内などの特徴がある。

 チジクジャは1680年に北部アドラール地方一帯を支配していたモール人部族のイダワリ(Idawa’ali)によって造られた。大きなオアシスを中心に独特の文化が栄え、オリジナルな町並みを呈する。残念なことに旧家の多くが、数年ごとの大雨のために崩壊した。


チジクジャ市街地。この街から多くのビジネスマンが出て、実力者らが協力して希望街道からチジクジャまでの道路を作ったという。砂丘と礫漠のすごい場所に、道路が通っているのに驚かされる 砂漠の奥地の中の町だというのに、車が多いのはやはりこの街は裕福なのかもしれない。 街から一歩出ただけで、こんなすごい砂丘が広がる。希望街道からチジクジャまでの道程は、たいへんな悪路だったが、今ではこの中を舗装道路が通っている。

 オアシスでは7、8月になるとゲトナといわれるナツメヤシの収穫時期になる。観光するには一番美しい時期だ。アドラール地方と同様、チジクジャのオアシスは大きな規模をほこり、モーリタニアで一番大きいといわれるナツメヤシの市場がたつ。



チジクジャ周辺のみどころ

ムージェリア(Moudjeria)
 ヌアクショットからやってくると、マグタ・ラハジャーを過ぎ、カンガラファを過ぎて山を上る手前にム−ジェリアという町がある。

 チジクジャから140kmのところだ。山の中腹の展望台から見るムージェリアの眺望はすばらしい。ムージェリアの町が宮崎のアニメ映画に出てくるラピュータの街のように眼下に広がり、その奥には延々と続く雄大な砂丘。何度見ても美しいため息のでるような景色である。
 ムージェリア峠から見下ろした街の風景。奥に果てしなく続く砂丘が続く。何度通っても、見とれてしまう光景だが、砂嵐の時は、当然この美しい景色は見えない。 タウジャベットの泉とその周りの巨大な岩山。雨が降ると大きな池になるが、しばらく雨が降らないとこのように、奥に3mくらいの水溜りになってしまう。魚がいた。


ラシッド (Rachid)


 チジクジャから北に35kmにあるオアシスの街。旧市街はラシッド乾川の右手の山腹にあるが、ほとんど跡形がない。新市街は川を挟んだ反対側の山腹にあり、非常に美しい町並み。豊かなオアシスのおかげか、町自体豊かな印象を受ける。このへん一帯の山の岩の大きさには驚くばかり。

 ラシッドから北に30kmあまり、タウジャベットのオアシスも美しい。テントを建てた小さなオーベルジュがあり、ささやかな対応に心を動かされる。

 さらに北へ30kmほど、トゥアジリ(Twajil)の小さな村を過ぎると眼下に壮大な砂の海が広がる。モーリタニアでは奥地を走っているといくつも、砂の海を見るが、ここからの眺望はベスト3に入るのではないか。

注意 : チジクジャから北へ、アタールに向かうコースで記載していますが、砂丘の向きからすると、アタールから南下してチジクジャに行くほうが走るのは楽だといわれています。いずれにしても、熟練のガイド兼ドライバーがいないと難しい。

 チジクジャから途中アインサフラの近くで1泊、レブシェール峠、ザルガ山の傍を通ってアタールまで、ラシッドからまる2日間かかる。今、チジクジャ〜アタールを結ぶ道路の建設が予定されており、数年後にはこの美しい景色も様変わりすることだろう。
ラシッド乾川。グレイタあたりから、ラシッドまで続く広大な乾川だ。川沿いに小さな部落が点在し、犬がヤギや羊を飼う手伝いをしているのが印象的だった。 ラシッドの新市街は、川のふもとから山頂まで、坂道だらけの町だ。川を挟んで、向かいに大きな岩山がある。その岩の大きさがすごい。 ラシッドのオアシス。乾川にそって広大なヤシの畑が続く。


エンナージの池 (Tamourt En Na’aj)


 希望街道のカンガルファからチジクジャに向かってすぐ、ンベイカ(Nbeika)の町がある。その先クサール・エル・バルカからオフロードでわき道にそれる。(この入り口が難しい。雨が降った後は、家畜のために柵が立てられるので、袋小路のようになってしまうからだ。)

 タガン台地の上にあるくぼ地で、雨が降ると池になる。そして、あたり一面鮮やかな緑で覆われ、スイスのような生き生きとした緑地になる。雨が降るのは主に5月〜6月、なんと緑地の奥には砂丘という不思議な光景。そして、リスやウサギ、シャッカル、ハイエナやたくさんの鳥が見られる。

 そこから南にはマトマタMatmataの深い崖が立ちはだかる。ラシッド乾川から山岳に入ってマトマタまでこの辺り一帯、大きな岩山で、この岩の上を走る。これほど巨大な石があるのかと思うくらいひとつの岩盤が大きい。巨大な岩の谷底には、3000〜4,000年も前に、地球変動によってセネガル川と分断され、この砂漠の中で生き延びてきたワニが生息している。

 繰り返すが、岩の大きさがすごい。そして、マトマタまでの道程、景色のすごさに圧倒され、さらに、ここにひっそりと生きてきた巨大なワニの存在にも驚かされる。このワニの住む池に水を飲みにやってくるヤギたちは、あまりの急な崖に息を呑む。そして、私たちの足元は40〜50mもある切り立った崖、その下の水の中で、3,4メートルもあると思われるこのワニは、時折、水のみにやってきた家畜を襲う以外は、魚を食べて生き延びてきたという。

ガンガラ (Gangara)

 ンベイカ(N'Beika)とマトマタの間、25km地点に、左手に1,5mくらいの高さの円形に石を積んだ建物が10数個並んでいる。ガンガラのグルニエ(保管倉)と呼ばれているもので、2000年も前に作られ、今でも倉庫として使われている。

タムール・エン・ナージ。モーリタニアでは珍しく、年間を通して緑地がある。乾季はこのように、美しい草原だが、雨が降ると、一帯車の通行が難しくなるという。 ガンガラのグルニエ。高さ2m、直径3,4mくらい。このあたり一帯に10個くらい点在し、使用中のグルニエは布などでフタがしてある。

タムシュケット (Tamchekket)

 キッファから希望街道をネマに向かって進み、80km地点に三叉路があり、そこを北に曲がる。さらに40km、オフロードを進み、キッファから時間にして3,4時間。雨季の時期にあたると、途中の粘土質のぬかるみがひどく、トラックでも立ち往生して動けなくなることがあるという。

 フランスの植民地時代、駐屯地だったところで、タムシュケットの警察署(Gendarmerie)の傍に、兵舎、宿泊所などがあり、2000年まで県庁として使われていた。この古いコロニアルスタイルの建物も興味深いが、町全体も粘土づくりの美しい町だ。

 町は高台にあるが、5分ほど車で降りると小さな池がある。雨季になると池になるところで、周辺では日干し煉瓦を作っている。そして、なんと、その川の中にワニが生息しているのだ。池にはラクダ、ヤギ、牛、羊と交代で家畜が水を飲みにやって来て、その上子供たちまでロバに乗って遊んでいる。

 このワニは体長1メートル弱、近寄ってもかみつかない。(と村人が言う)。セネガル川の支流が雨季につながって、ここまで来たワニが、その後池になってしまって、元のところに戻れなくなってしまったのだという。魚を食べているという話だ。噛み付かないワニなどいるのだろうか?しかし、タムシュケットの町の人たちは、「ワニを見に来たの?そこのマリゴー(雨季になるとできる池) の中だ」とまるでタヌキがいるかのように示す。

 牛は水を飲んだ後、ワニをまたいで帰っていった。雨が降らないとマリゴーは干上がって水が無くなる。そうするとこのワニ達は?そして、この魚も住めないような泥水の中、何を食べてワニたちは生きているのか?

 日干し煉瓦の材質になるような土壌なので、粘着質で、ぬかるみに入ると簡単に抜けない。家畜の赤ちゃんなど、ぬかるみにはまって動けなくなる子もいるのだそうだ。

町の中心から1kmあまりのところにある池。ラクダやヤギ、羊、牛が交代で水を飲む。そしてここにワニが住んでいた。水を飲み終わった牛がワニをまたいで行った。 池の反対側で日干し煉瓦を作る職人。少し湿っている泥に足を入れるとズブズブっと入り込んでしまう。 ガラシッドの中心部にある植民地時代のフランス軍の建物。

アウダゴスト (Audaghost)


 タムシュケットからさらに60km奥地に行くと、テグダウスト(Tegdaoust)という町がある。かつて、アウダゴストと呼ばれたキャラバンの町である。15年ほど調査隊が入って、建物の調査が行われた。

道路事情によるが、タムシュケットまでキッファから5時間、さらに悪路を3時間ほどかかる。


 
  

アウダゴスト遺跡 調査が15年にわたって続けられたという。
 
チジクジャの宿と食事

 ホテル,キャラバン宿(Auberge  des  caravannes)
2001年3月からオープンした。オーナーがシンゲッティのキャラバン宿と同じで、建物もバンコとよばれる土を貼り付けたサハラ風。部屋は絨毯の上にマットレスを並べたサハラ・スタイル、トイレ、シャワーが完備、サハラ風テントで寝ることもできる。
 
市内にホテル・チジクジャ、オーベルジュ・ワハットなどがあるがクローズしていた。市の規模のわりに、宿泊施設はない。

   

チジクジャへのアクセス

 アクショットからのアクセスが2004年にヌアクショットから舗装道路が貫通した。ヌアクショットから希望街道を通って、サングラファからチジクジャに向かう。700kmあまりだが、希望街道では家畜が飛び出してきたり、ブーティミリットのような市場の中を街道が通っていたりするのであまりスピードが出せない。8〜9時間ほどかかる。

 チジクジャから北部のアタールへのアクセスは非常に困難で、ガイドなしでは危険。途中車の故障で、5日間かけて歩いてきたというフランス人グループにあったことがある。すれ違う車も少ないので、慎重に準備をしたほうが良い。また、チシットへ行くにもガイドは必須。共に途中給油できる町がないので充分燃料を準備する。

ここから − ヌアクショットまで約700km、
             − チシットまで約240km
            − アタールまで460km