Kiffa&Ayoun el Atrous


キッファ

首都ヌアクショットから604km、アレグにつづく大きな町がキッファである。ヌアクショットからネマまでの主要幹線道路である希望街道(Route  de  l’espoir)の中間にある町だ。北にサハラ砂漠が広がり、南にサバンナの樹林地帯が続く、ヤシの畑に囲まれた町である。

 キッファは希望街道沿いにある町の中でも品物が豊富で、近隣地帯の食品・生活物資の重要な補給地となっている。北のタムシュケットなどの砂漠のオアシスへの入り口であり、南のセネガル河流域の農耕牧畜地帯への入り口にあたるからだ。

 町の北側に軍隊の駐屯基地や市役所などがあり、町の中心を大きな舗装道路が縦断して南部にあるキッファ飛行場まで延びている。家々は赤い土の上にスーダン風建築様式の粘土でできた建物で、モーリタニア北部では見られない様式。

 キッファは日本ODA支援により、町の水道設備が設置された。また、キッファから南へ約150km、セネガルとマリの国境の町セリバビでは、日本から井戸掘削事業のための拠点として2001年4月までニッサク株式会社の駐在事務所があった。




        

キッファの入り口。モーリタニア第2の都市。 キッファのモスク 希望街道をキッファに向かう途中の町
キッファの手前、ゲルー キッファからタンタンに向かう希望街道沿い タンタン近く、希望街道から見える山


アイウン・エル・アトルス

キッファから約215kmの町がアイウン・エル・アトルス。希望街道をヌアクショトから走っていくと、両側に奇妙な形の巨大な岩が見え始めるとアイウンの町で、砂漠地帯からサバンナ地帯の分岐点にあたる。 
 ヌアクショットから希望街道を進んでいくと、大きな岩が点在しているのが見えてくる。そうすると間もなく、アイウン・エル・アトルスの町だ。希望街道沿いに長く町が広がっており、町の入り口にも、人家の裏に3階建てほどの岩があって、なにもここでないところに家をたててもよさそうなのにと思ってしまう。

 アイウン・エル・アトルスの家々は近辺から取れるいろいろな石をレンガのように積み上げた独特の建物だ。白、黄土色、赤土色、灰色などの色の石を20cmくらいの立方形に切ったものを、幾何学模様に並べ、塀や外壁を飾る。専門の石切り職人がおり、昔から石と石をぶつけたり、金物で叩いたりして同じような大きさに切り、それをロバで運ぶ。主に花崗岩で非常に重いので、職人もロバもたいへんな重労働だ。


アイウンの巨大な岩郡

 どこのガイドブックにも記載されていないのに、こんなすごい観光地があった。アイウン・エル・アトルスの飛行場に向かって、希望街道を左に曲がり、さらにしばらく20kmあまり行くと、広大な平地にポツンと岩が見えてくる。近くに行くとまるでキノコのような形。そして、周りを見渡すと、同じような風化してユニークな形をした岩が、次々と見えてくる。岩の高さは20〜30m、遠くから見るとあまり大きそうに見えなかった岩が、近くに行くと、下写真右上のようなサイズなのだ。終日かけてもわずか一部しか見られないほど、たくさんの岩があり、広域にわたって点在し、そのひとつひとつがすべて特徴のある岩で、スケールの大きさに唖然とするばかり。
 点在する巨大な岩は見渡しただけでも40〜50はあるだろうか。そしてとりわけ有名なのがティンボンバ、アイウンのマッフルーガとゲルブ・イニミッシュの岩。個人的には、ティンボンバの岩が一番美しいと思った。

 ティシットからワラッタの中間ほどに、マッフルーガの岩(ティシットのページを参照)があるが、何十億年も前はこの辺と地続きだったらしく、同じような岩質で、風化によってできたようだ。アイウン・エル・アトルスの町から、アイウンのマッフルーガ岩、ティンボンバ岩、イニミッシュの岩を一人回りすると40kmあまり。しかし、このルート以外にもまだまだたくさんあるが、ほぼ砂地なので車ではアクセスがむずかしいし、歩くには広すぎるし・・・。

 どこかにビバークして2日くらいかけてゆっくり見たい。ただ、この辺は一面、クラム・クラムの生える地域なので、時期と場所を選んでテントをたてないと大変なことになる。


クラム・クラム (イヌム)
 モーリタニアのサヘル地帯、希望街道の界隈からセネガル川にかけて一帯に現地語でイヌム(Inm)と呼ばれる草が生えている。フランス語でクラムクラムと呼ばれ、ちょっと見ると、芝生の背の高いような草だが、この種がたいへんなのだ。雨のふった後、一面グリーンになってそれはそれは美しく、家畜たちも幸せになるのだが、しばらく雨が降らないと、この種が地面に落ち、風で舞う。種は大きさ3mm×4mmくらいのとげの集まり。動物などにくっついて散布するタイプの種子なのだろうが、これを踏みつけると飛び上がるほど痛い。衣類にくっついた種で、衣類にギャザーができる。そしてくっついた種をとろうとすると、トゲがささり、それが皮膚に残って痛い。一見草がなさそうな砂丘でも、ちょっとした窪みにこれがたまっていて、サンダルや砂の中に入り込む。サンダルの後ろにもしっかり種が刺さって残る。

 まさに、このアイウンの巨大な岩がある辺りも一面、クラムクラムに覆われている。岩の周りは風で砂が吐き出され、すり鉢型砂丘の中に岩が立っている形になる。砂丘を下って岩のふもとまで行ったものの、戻る時に砂丘を登ろうとすると、クラムクラムがサンダルの中に入って、何度それを取りながら止めていた車まで戻ったことか。この辺で、美しいものを見るには痛みをともなうようだ。

 希望街道沿いで、一面、芝生が枯れたようになっているところを見たら要注意!この中に用足しに入ると、ズボンのすそにびっしりくっつくことになる。


アイウン近郊特有の、石を重ねた建物と塀。
色の違う石を手で同じような大きさに切り、それをレンガのように重ねてある
アイウンのオーベルジュ、サアダ・テンザ。広い敷地にある豊かな空間の宿で、従業員も親切だ。 岩の麓にいる白っぽいのが筆者。岩の大きさが想像いただけると思う。岩のまわりは風で砂が大きくえぐれ、このふもとまで行くには、10m近い砂丘を降りていかなければならない。
アイウンのマッフルーガの岩 ゲルブ・イニミッシュの岩 ティンボンバの岩。アイウンの岩群の中でもっとも美しい形。中ほどの空洞のところまで登ることができる。
地面の枯れた草のようなものがクラムクラム トゲの塊のようなクラムクラムの種。これが衣類にくっつく。踏みつけると飛び上がるほど痛い。 サンダルの裏にもくっつく。注意して取らないと指にトゲが刺さって残って痛い。
キッファとアイウン・エル・アトルスの宿と食事

ホテル エ・レメル (Hotel El Emel) 
п@563-2637  Fax 563-2638

キッファの検問所を過ぎてすぐ、左側にある、大きな西洋風のホテルで、クーラー付の部屋画の20あまり。12,000ウギア/部屋。広い敷地内に平屋建て建物がならび、シーズン中は大きなモーリタニアスタイルのテントが食堂になる。食事は一人2,500ウギア〜。朝食1,500ウギア。

オーベルジュ エル・ガル・ガミ (Auberge El Ghal Ghami)
Tel 563-2345 Fax 563-2345  キッファの町の中心にあるローカルスタイルの宿。5,000ウギア〜。食事は500ウギア〜。

オーベルジュ サアダ・テンザ (Auberge Saada Tenzah)
アイウン・エル・アトルスにもホテルが二つ。このオーベルジュは2007年に建てられた。この地方出身の代議士エザ・ミント・ハマムがオーナーで、広い敷地の中にバンガロースタイルの建物が数棟、ゲストハウス用の一軒家、レストラン用大型テント3棟などがある。ベッドルーム、シャワー付き、2食付きで10,300ウギア〜。
   

キッファとアイウン・エル・アトルスへのアクセス

 希望街道を往復しているトランスモーリタニアン(transmauritanienne)のタクシーや、街道沿いの都市を行き来しているバスがある。
ヌアクショットからキッファへの飛行機も週1便(欠航が度々あるが)フライトしていたが、2005年になって欠航。