Oualata



 ワラッタはモーリタニアの中でも最も美しい街のひとつ、ユネスコ世界文化遺産に指定されている。  
 首都ヌアクショットから行くには、ネマまで2日間、そしてネマからオフロードで1日かかる。しかしそれだけの時間を掛け、困難を乗り越えて行くだけの価値は充分にある(と筆者は思う)くらい、町の隅々までアートの町だ。この町独特の土で装飾した建物は、西アフリカで唯一の文化で、他では見られない。

 せっかく来たのだから、3日くらいは時間をかけてゆっくり街の中を散策したい。町に古くから住んでいる案内人を頼んで同行してもらうとよい。外国人がいきなり行って見せてくださいと言ってもなかなか屋内を見せてもらえないし、また見せてもらったとしても一軒一軒お礼を払うことになってしまう。ガイドもきちんとした人でないと、同じように家ごとに見学料を払うことになるので注意。

 

ワラッタのみどころ


 ワラッタが美しい町といわれる所以は、赤土色の土を固めた家の外壁に白い幾何学模様が施されている独特な装飾。女たちの仕事で、思い思いに模様をつけているのだそうだが、アフリカの風土に独特のイスラム的なデザインがマッチしてじつに美しい。ひとつひとつの家の模様が全部違い、まるで街全体が美術品を並べたようだ。家の中は外壁と反対に白地の壁に茶色の模様が施されている。

 すべての家の建物のカーブがやさしい。入り組んだ路地を進むと、さまざまな模様の家が次々と並んでいて、その中を現地の民族衣装を着た町の人たちが優雅に歩いている。この町の空気が穏やかなのは、このアートによるものなのかもしれない。歩いていてやさしい気持ちになってくるのだ。
 子供たちが、カド、カド(何かちょうだい!)と口々によってくるのが少し気になるが、大人たちは自由に景色を撮らせてくれる。

 案内人のお陰で多くの建物の中を見せてもらった。建物の中も、家ごとに違う装飾を施してある。複雑に段をつけたり、階段を白く塗ったり、どこを見ても絵葉書のようだ。写真に撮られることになれているのか、案内人が頼むとすぐにどうぞといって、写真をとらせてくれる。

 建物は全て干しレンガを重ねて作り、その上に粘土と牛の糞を混ぜたものを塗り重ねている。赤い土は近くで産出される土で、専用の職人がいる。白い色は、同じく、近くで取れる海藻の化石を水に溶いたもの、そして黄色はアカシアの樹液、ゴム・アラビックを水に溶かしたもの、など天然の素材が主だった。雨が降ると、溶けて模様が崩れてしまい、塗り替え作業は雨のシーズンの後に行われていた。
 
 しかし、最近は、雨が降っても絵が崩れないペンキが普及し始め、赤やグリーンなどカラフルな模様をする家がでてきたという。残念ながら、一瞬目を惹かれるが、自然の素材を使った柔らかい風合いがない。

 ワラッタもワダン同様、キャラバンの街としてアフリカ北部から塩、銅、宝石や布を運んできた隊商が、ここで南部からやって来た商人達と金、象牙、黒檀などと交換した街である。

美しい赤土色の外壁に白、黄色などの模様を施してある。雨が降ると模様が流れてしまうので、度々塗り替えるという。外側も美しいが、建物の中も、階段などが柔らかいカーブで実に美しい。この中で生活しているのがうそのようだ。

外壁は赤土に白い模様、部屋の中は、白い壁に赤土の装飾が多いという。右写真はアンティックの扉。中央の写真はオーベルジュ(宿屋)の屋内。町には、4つほどオーベルジュがあり、その中で一番装飾が美しい。ただし、ここは大部屋が二つと小部屋が一つしかないので、なかなか泊まるチャンスがない。

町の中央にある新モスク。1日5回、お祈りを促す放送がマイクを通して流れる。朝4時半から始まるのだが、なんとも音が割れて、かわいそうな放送だった。 博物館の入り口 博物館の中は柱から壁から赤土の絵が描かれている。このデザインを習いにくる若い女性もいるという。
壁の材料になる赤土。近くで採掘される。 赤土はそれだけでは乾燥したら崩れてしまうので、牛の糞を混ぜている。中央は職人。 壁の白い色に使う海藻の化石。

ワラッタへのアクセス

 今の時代、交通網が発達して色々な交通手段によって世界中どこへでも行くことができるが、ここくらいアクセスが困難な、世界から切り離された街は珍しいのではないか。

 陸路ではネマまで希望街道を行き、そこからさらにオフロードでワラッタへ行く。希望街道は近年交通量が増え、加えて家畜が度々道路に飛び出す。そしてブーティミリットやタンタンなどは道路が市場の中を通っているので、人ごみと渋滞で時折動かない。ネマまで1200kmだが、キッファやアイウンあたりで一泊したほうが良い。
 
 ネマから120kmほど、最近ダカール・ラリーで多くの車が通過したことで、ワダチがはっきりして、道は以前に比べてわかりやすくなった。雨の降った後はぬかるみがひどく、車が通れなくなるので、山の上の道路を遠回りして行く。どちらにしても、安全の為に現地のガイドは同行したい。

 空路は2005年まで、ヌアクショット〜ネマの定期便が就航していたが、現在はフライトしていない。